コミックコーナーのモニュメント

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セントールの悩み14巻 感想【ネタバレを含みます】

 

 

 

セントールの悩み 14 (リュウコミックス)

セントールの悩み 14 (リュウコミックス)

 

カラーページで着飾る南極人たちに、100話記念の温泉回と、華やかな始まりながらも今回は戦争の話が多めです。特に中盤からの展開には度肝を抜かれました。セントールの悩み14巻の感想です。

 

100話記念温泉回

 祝100話ということで、100話目は温泉回。メンバーは現役オカルト科学部フルメンバー+ニルちゃんで、名目は部活の合宿。綾香ちゃんの祖父の会社の保養施設に来ているということです。

 温泉に入りながら雑談しているだけですが、これが面白い。

乱入したメイドさんによるお嬢様自慢という名の綾香ちゃん公開処刑をはじめ、裸から性的指向の話になったり、温泉から古代のスパルタの話になったり、目まぐるしく話題が変わるのも楽しいです。

誰かが何かを言ったことに対する反応や、新しい雑談のネタの振り方といった会話の流れの中にも、11人の持ち味が良く出ていて面白い雑談回でした。

特にニルちゃんがかわいかったです。

湯船の中に口を入れてブクブク泡をたてる姿に、自分も小さいころにこんなことをしたなと思いつつ、南極人には入浴の文化がないことを思い出しました。

幼少期のトラウマもあり、お風呂が苦手で、必死に苦手意識の克服をしたスーちゃんとは対照的。「克服しなければ真の相互理解は不可能」と大仰な覚悟で苦手克服をしたスーちゃんもかわいいですが、ニルちゃんの異文化交流を自然体で楽しんでいる感じもいいです。

そして何と言っても一発芸「ネッシー」。いかにも「その場で思いついてやりました」という感じと反応をうかがう流し目が最高でした。

 

御霊家の謎

101話は、御霊家の日常の一幕と、ちーちゃんたちの生まれた時のお話。

 麦茶を飲むために、御霊さんの膝の上から台所へ走っていったと思ったら、わざわざ御霊さんの所に戻ってきてから飲むちーちゃんがかわいい。

御霊家は子供たちがいると本当にアットホームなほんわかパートになります。

 御霊さんと御霊父の2人きりだと昼ドラじみたドロドロパートになりますが。この2つの温度差がひどいです。

 回想シーンでは御霊さんのお母さんが登場しました。6巻のおまけページの挿絵で、それらしき人が載っていたことはありましたが、本編ではっきり登場したのは初めてです。

 御霊母が今の御霊家にいないことに、何か深い理由がありそうで気になります。死去しているという風に明言はされていませんし、病気の治療や療養で家を離れていることも考えられますが、その割には不自然なくらい話題に上がりません。

末ちゃんが御霊神社の御祭神に「姫巫女」などと呼ばれて、その神様と日常的に交流していることを考えると、その母親である御霊母にも何がしか、オカルト方面や神様がらみのエピソードがあるのではないかと思えてきますが、現状では情報不足。もどかしいです。

オカルト方面と言えば、104話では御霊さんの底知れなさが、今までとは違う方向で爆発しました。

御霊神社に持ち込まれた本に、とんでもない年代物の悪霊が憑いてきました。

ところが、御霊さんの生命力が強すぎて、ただそこにいるだけで悪霊が近づくことすらできなくなるとのことで、その効果は御祭神のお墨付きです。

さらに悪霊が妹に害をなせば、御霊さんが悪霊を憑り殺すとのこと。

生者が悪霊を憑り殺すという意味が分かりませんが、御霊さんならやりかねないという妙な説得力があります。

そんな御霊さんに情念の矛先を向けられている御霊父が心配です。

 

激化する紛争そして…

 14巻での両生類人武装戦線のエピソードは、会議からのスタートとなりましたが、そのメンバーが凄い。武装勢力のリーダーやその側近、哺乳類人社会で成功している両生類人企業家ジャン・ルソー、日本から義勇兵の名目で派遣されているプロ軍人の人魚・美浦さん。

 ここまでは今まで通りのメンバーなのですが、そこに両生類人に協力する南極人のスリスルスルスーラが同席しています。

 美浦さんも南極人の介入を怪しんでいるようですが、スリスルスルスーラの真意はわからず。頭上を飛んでいるUFOなども含め、日本から派遣されてきている美浦さんに、南極人の秘匿情報をあまり隠す気がないようなのも気になります。

 日本にいる姫乃たち、戦場ジャーナリスト、秘密裏に空輸される兵器、敵側の兵士たちに、その上層部の思惑、戦場の光景と目まぐるしく場面が変わっていきます。

1人の人物の心情や内面を主観的にじっくり描く表現方法も好きなのですが、「紛争」のようなテーマを俯瞰するのにはこっちの方がいいですね。

この漫画自体、その世界観を登場人物それぞれの目線や、いくつもの視点を通して多面的に描いていますが、今回は場面転換の頻度も多く、いつもよりも畳みかけるような勢いがありました。

戦場では、まさに血で血を洗うといった一進一退の攻防が繰り広げられる中、ついにスリスルスルスーラが動きます。この後の展開には度肝を抜かれました。

 

海から現れた怪獣が人権と市民権と国民皆保険を要求する漫画

 スリスルスルスーラの号令で海から現れたのは、いつぞやの巨大生物。6巻での人魚の祭事の際に出てきた「多言神」の偽物です。

 圧倒的な巨体といい、海から現れるところといい、登場の仕方が怪獣映画そのもの。

 一般的な怪獣映画と決定的に違うのは、その怪獣が言葉を話し、人権と市民権と国民皆保険を要求するところでしょうか。

 人権と市民権のみに留まらず、国民皆保険まで入っているところといい、怪獣が行うのが町の破壊ではなく、非暴力デモだというところといい、『セントールの悩み』らしくて、その上で読者の度肝を抜く展開です。

 人目につかないところで南極人が暗躍する場面や、宇宙菌類がらみのエピソードはともかく、姫乃をはじめとした一般人が見ている「この世界」は、私たちの世界に準じた常識的なものでした。※一般常識の違い、思想的な違いは多少ありますが。

 姫乃が異世界へ行った時のことも、本人ははっきりとは覚えておらず、夢だと思い込んでいるようですし、ちびっ子たちが神社の森から妖精のいる世界へ迷い込んだ話も、子供の頃の不思議体験として記憶の棚にしまわれそうです。しかし今回は話が違います。

 不特定多数の一般人が目撃しているごまかしようのない状況で、いきなり怪獣が登場するという超展開に唖然としました。

怪獣の前に現れる役人たちの「入国管理局局長臨時代理補佐」や「法務大臣臨時代理補佐代行」といった逃げ腰の肩書にも笑いました。

人魚の祭事のときに、この怪獣を目撃している人魚のエリちゃんは、テレビを見てどういう反応をしているのでしょうか。その部分がとても気になります。

 

 

 スリスルスルスーラの紛争介入は独断であったようで、南極人側も大騒ぎ。

宇宙菌類方面でも、以前登場した人馬が、宇宙菌類から解放されたエイリアンたちに「宇宙民主主義」を提唱。

両生類人、南極人、宇宙菌類方面のエイリアンたちと、様々な方面に「ニンゲンの毒」とやらの影響が出ているようです。

 南極人の言う「ニンゲンの毒」とは民主主義や形態平等をはじめとした主義思想そのものよりも、その思想のために自分の命を懸け、他者の命も奪うという過激さや、それを正当化する価値観のことのように感じました。

 姫乃たちの部室の天井にまで宇宙菌類が姿を現し、両生類人の紛争もいよいよ大詰めと、続きが気になります。