コミックコーナーのモニュメント

コミックコーナーのモニュメントは、漫画を読むことが好きな石文が、読んだ漫画の感想を書いたり、紹介をしたりするブログです。

ここまでやるか…世界観が凄すぎる日常漫画:セントールの悩み レビュー

 

タイトル:セントールの悩み

  作者:村山慶
  年代:2011年以降

  巻数:既刊16

 

作品概要

 ケンタウロスのような「人馬形態」の君原姫乃は女子高生。悪魔のような翼を持つ「竜人形態」の獄楽希や、頭に角を持つ「角人形態」の名楽羌子と共に、地元の高校に通っています。

 様々な形態を持つ人々が当たり前に存在する「六肢人類」の世界。その平凡な日常風景と日常の中に潜む様々なテーマを描く、異色の架空人類史日常漫画。
 

様々な形態の人々の現代生活を描く「人外」「日常」漫画

この漫画はいわゆる「日常系」漫画であり、さらには、人とは違うけれど人に近い姿をした登場人物が多数出てくる「人外モノ」でもあるわけですが、そうしたジャンルの他の漫画作品と比べても異色です。

この作品では、ケンタウロスや、人魚、天使、悪魔そのものといった外観の「人類」が登場します。

しかし、彼らは異世界からの来訪者でも、突然変異のミュータントでもなく、現実の人類に変わる存在として描かれています。

つまりは、ごく普通の一般人。ただし、私たち読者の目線で見るとファンタジー世界の住人そのものといった容姿です。

そんな彼らが学校の制服に袖を通して、現代的な社会生活をしているギャップと、視覚的なインパクトは、絵を見ているだけでも十分に面白いです。

特徴的な見た目だけではなく、キャラクターの性格がしっかり描かれるところも魅力的で、11人の考え方の違いがよく分かる掛け合いも楽しめます。

 

世界観の作り込みがもの凄――――――――く細かい!

高校生活の一幕、小さな子供の成長、家庭ごとの事情、行事やイベントなど、日常漫画らしい場面も盛りだくさんですが、この漫画の最大の特徴は、その世界観の作り込みが、もの凄く細かいということです。

例えば、「この世界」の人類が、なぜこんな姿になったのかといった進化・生物史の話。

 例えば、我々の世界と似ているものの、物語を読み進めていくと、ところどころ引っ掛かりを覚える「この世界」の現代社会。何故我々の世界と違うのか、どういう背景があったのかという歴史・人類史の話。

 さらには、社会問題、国際情勢、ファッション、オカルト、サブカルチャーとあっちこっち掘り下げられます。

本編だけでも十分濃いのに、おまけページでは巻ごとのテーマで掘り下げられ、その内容も「家庭の遺伝学」、「歴史上の人物(日本編)」、「世界の民族衣装」、「空想世界の英雄達」、「日本の妖怪」等々と、テーマも多岐にわたり、説明の文章もわざわざ「この世界」のテキスト風に書かれるなど特濃。

設定好きの人や、世界観そのものを楽しみたい人には、たまらないのではないでしょうか。

初めの内は、主人公である姫乃とその周囲の話ですが、巻を追うごとに描かれる範囲も広がっていき、過去の形態差別の歴史や、現代の紛争地域の話といった重い話も増えていきます。「日常」という言葉の解釈の仕方に疑問を抱く人も出てくると思われます。※その時代の「日常」、紛争地域の「日常」といった解釈をすることもできなくはありません。

また、独自の世界観を広く、深く描いているので、1つ疑問が解決されると新しい疑問が2つ出てくるといったこともよくあります。

自分が疑問に思ったことが、中々作中で説明されず、もどかしい気持ちになることもあるかもしれません。セリフや言葉での詳しい説明がされずに、行間だけを読ませるような演出もありました。

そういった部分が大丈夫であるならば、この作品は他に類を見ない、異色の世界観の日常漫画として、もの凄く楽しめる作品です。

 

 

こんな人にオススメです。

l  独自の世界観や、筋道の通った設定を読み解くのが好きな人。

l  ほのぼの日常はもちろん、生物史、人類の歴史、サブカルチャー、オカルトやSF、ほのぼのではない日常の生々しい部分まで作り込まれた世界を覗きたい人。

l  魅力的な登場人物の掛け合いを通して繰り広げられる、私たちの世界にも当てはまる社会問題や、人生の悩みについての議論を見てみたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

l  生物の進化、人類の歴史、社会問題などといった細かいことは気にせずに、かわいいケンタウロスや、天使・悪魔の日常だけを眺めていたい人。

l  のどかでほのぼのした日常だけを楽しみたい人。日常の生々しい部分や、殺伐とした世界は見たくない人。

l  政治色が強い漫画が苦手な人※扱うテーマの1つとして、政治色が強いだけで、特定の主義・思想だけを賛美する内容ではありません。

l  世界観の設定、説明を小出しにされるのは嫌な人。