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魔女の下僕と魔王のツノ1巻 感想【ネタバレを含みます】

 

師匠にして育ての親である魔女ビビアンを救うため、薬の材料である魔王のツノを求める薬草魔女ベティ。その下僕であるアルセニオは単身魔王城に挑みますが、そこで待っていたのは、あまりにもイメージと違う魔王と、訳ありの虜囚の少女でした。

ファンタジックラブコメディー、魔女の下僕と魔王のツノ1巻の感想です。

 

ノリが良くて、テンポも良い

魔女の少女ベティが、箒に乗る練習をしているところから物語が始まるのですが、冒頭のこの場面から会話のテンポにキレがあって面白いです。

箒に乗るのが苦手なベティに、陽気な青年であるアルセニオはマシンガントークで応援をしますが、ベティは集中できないから黙れと言います。

黙れと言われた後も自分の存在アピールたっぷりの応援を続けたアルセニオが、漸く黙ったと思ったら、ベティが箒から落下。高所からの落下ではなく、自転車の練習をしていた子供が転んだ感じです。

恥ずかしそうに振り返るベティの視線の先には、真剣そうな目で黙ったままベティを見つめるアルセニオの姿が。

散々黙れと言っていたベティの口から思わず出たのは、「何か言いなさいよ」の一言でした。

セリフの掛け合いのテンポの良さもさることながら、言い回しも秀逸。さらに、上記のような無言のアクションを挟んで、絶妙な間を作るやり方も面白いです。

露骨なギャグシーンに限らず、世界観の描写や、物語の進行にかかわる説明がある場面でも、登場人物たちの陽気な掛け合いはそのままでした。

 

二頭身の魔王キングブル(変態)とゆるい空気

この漫画はタイトルの通り、魔王のツノを手に入れることが主人公たちの目的であり、物語の柱になっています。

 延命のために、いつ覚めるともわからない魔法の眠りについたビビアンを前に、ボロボロと泣き崩れるベティ。その涙を背負ったアルセニオは、決死の覚悟で魔王討伐に挑むわけです。

しかし、そんなアルセニオの前に現れたのは、二頭身のゆるキャラの様な魔王キングブル。

 シリアスな空気が一気に緩みます。

このキングブルなのですが、アルセニオの攻撃が直撃してもまるで何事もなかったかのように立ち上がる程タフ。おまけに作中世界で唯一無二の破壊力の雷の魔法を使います。

 しかし、その外観はゆるキャラの中でも、かなりゆるい部類に属するゆるキャラのようなデザイン。画面に出てくるだけで空気がゆるくなります。

 さらには、魔王城にて囚われの身である少女・レイに、セクハラそのものの尋問をしたり、哺乳瓶を渡して自分に飲ませるように迫ったりと、変態です。

 物語の柱にして、強大な敵である魔王の様子からも分かるように、この漫画はそれまでシリアスな空気が流れていても、容赦なくギャグを入れてきます。

 アルセニオにしても、度重なる魔王の攻撃で自身は満身創痍、レイに1人で逃げるように息も絶え絶えに告げるというシリアスシーンの直後に、そのレイの手によって、哺乳瓶に入ったミルクを飲まされるという目に遭っています。※治療のための行為です。

 シリアスなシーンとコミカルなシーンが入り乱れている漫画は他にもありますが、魔王のデザインといい、この漫画はギャグを入れる場所やタイミングに容赦がありません。

 ちゃんと笑えるのですが、その容赦のない思い切りの良さにはびっくりしました。

 

ヒロイン?レイと紳士?アルセニオ

 先ほど、レイのことを少女と表現しましたが、この表現は微妙なところ。

 レイは肉体的、外見的には少女ですが、本来は男の子。現在の性別は、魔法の実験の失敗によるものということです。

そもそも、何故魔王の城に捕まっていたのかというと、魔女ビビアンの家と魔王の城を間違えて訪ねてしまったからという理由。

 自身の体にかかった魔法を解いて男に戻るためには、魔女ビビアンの助力が必要で、さらに帰りたくない理由もあるレイは、そのまま一行に加わります。

初心な上に自分は男であると主張するレイは、ベティにアルセニオと同じ部屋に寝泊まりするように言われても気にせず、元気のある返事で快諾。

 アルセニオが慌てて何がまずいのかを説明しても、いまいち伝わらず。

仕方なく「例えば俺が君のオッパイ揉みたいとか言い出すかもしれないんだ」と男の危険性を訴えたところ、悩んだ末に「に2秒だけ、なら」と珍回答。

レイを男として扱ってあげたいと思いながらも、男に対して無防備なレイに突っ込まずにはいられないアルセニオ。

無防備さでアルセニオを慌てさせ、どこかズレた珍回答で混乱に陥れるレイ。

リアクションの良さや、絶妙な間の取り方のせいもあって笑いました。

さらには、アルセニオの主人の立場のベティや、魔王(変態)も絡むとますます話がこじれて面白いです。

 

 

 1巻の最後で、アルセニオたちの前に登場するなり、レイを攫って行ったロイド。

レイを女の子にしてしまった魔法の事故の当事者であるロイドの「責任を取る」発言からのプロポーズと、1巻から急展開で勢いがありました。