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魔女の下僕と魔王のツノ2巻 感想【ネタバレを含みます】

 

 

 突如来襲した幼なじみに攫われたレイ。それを追いかける魔王とアルセニオ。魔女の下僕と魔王のツノ2巻の感想です。

 

性別の変化に対するスタンスの違い

極北の地、ヒュペルボレアからレイを連れ戻しに来たロイド。レイの幼なじみで、レイが男性から女性になってしまった魔法の事故の当事者です。

レイを女性にしてしまった責任を取ると言い、ストレートにプロポーズまでしてきます。

レイは自分を親友として見てもらいたい様ですが、ロイドは「もう友達とは思っていない」とさりげなく唇まで狙ってくるなど、完全に女性として扱っています。

レイの性別の問題に対するスタンスが、アルセニオとはまた違うところが面白いです。

レイとロイドの関係を異性愛的に見るか、同性愛的に見るかは、性転換の部分を読者がどう捉えるかで意見が分かれそうなところ。

読者の視点とはまた別に、レイやロイド、アルセニオといった登場人物たちが、性転換に対してそれぞれどういう風に考えるのか、どういう風に向き合うのかが面白いです。

これからますます面白くなりそうな部分なので楽しみにしています。

 

極北の魔女エリック

 レイの兄で、ロイドの師匠でもあるエリック。

心臓に病を抱え、自分の身体を直すために、独学で魔女の魔法を研究していた天才ですが、ところどころでズレているのが、兄弟であるレイを連想させます。

回想で出てきた場面では、自身にかけた変身の魔法の解除のために、ためらいもなくロイドの唇を奪ったり、魔法で女性化した自分の身体をネタにしてロイドをからかったりと、愉快に周囲を振り回します。

ファーストキスを奪われたロイドが一晩放心していたのには笑いました。

かと思えば、魔法で梟の体に憑依した状態で、レイにさんざんモフられ、ネズミの体に憑依していたときにさんざん鳥に襲われたせいで鳥嫌いになるなど、受難体質でもある模様。

周囲を振り回す側としても、周囲に振り回される側としても今後の活躍が期待できます。

 

性別が変わると心の性別も変わるのか?

 登場人物の肉体が、本来の性別とは別の性別になってしまういわゆるTS(性転換)は日本の漫画でも割とよく使われる題材です。

ドタバタしたコメディー調のものも、性別が変わってしまったことによってアイデンティティーの危機を迎えるようなシリアスなものもありますが、どういう理由で変化し、その変化がどのように描かれるかは当然漫画によっていろいろです。

この漫画の場合、変化の理由については「魔女の魔法」という、それ以上の説明が不要のある意味で一番便利なツールを使っているわけですが、変化の描き方が中々に細かい。

より正確に言うのなら、性別の変化に対する考察が細かい。

性別の変化に対する考え方、もっと言えば「性別」というものについての考え方に踏み込んだ説明があって驚きました。

エリックが自身にかけた女性化の魔法と、それが心に与える影響についてロイドに話している場面があります。

「魔法で体が女性になった場合。心まで女性に変化するのか」ということについての考察です。

ここでの結論は「(おそらく)変化しない」。

ここでいわゆる「心の性別(性自認)」についてと、それが生まれる前に決定すること、肉体の性別が決まった後で脳にも男女差が生じること、肉体の性別と心の性別が必ずしも一致しないことなどが語られました。

性同一性障害などの解説で見かけることが多くなった一連の説明ですが、まさかファンタジーラブコメディ―で見かけることになるとは思いませんでした。

他にも、元人間で現魔物のアルセニオから、元男で現女のレイへ「女の今でも、男を見る目は、男だった頃と、同じだと言える?」という質問が投げかけられる場面があります。 

アルセニオ自身が、人間の頃と魔物になってからで人間を見る目が変わったという経験をしていることが、この発言に重みを与えています。

 エリックの方は本などで調べただろう専門知識で、アルセニオは自分自身の経験と、全く別の方向から全く別の仮説を立てて考えているわけですが、肉体の変化が心にどのような影響を与えるのかが、真剣に考えられているという点がとても興味深いです。

 今後、性別の変化の影響で、人間関係がさらに複雑化しそうですが、本人の心にどのような影響が出るか、周りはそれをどう捉えるのか、細かいところまでしっかりと描かれそうなので楽しみです。

 

 

アルセニオがぎこちなくレイの足をマッサージしているところに、ロイドが乱入してきた場面ではびっくりしたという意味でも、笑いという意味でも吹き出しました。

 アルセニオとレイのドギマギしながらのやり取りを唐突にぶった切るタイミングでの乱入は、脈絡がない分、読者目線でも完全に不意を突かれました。

 シリアスな会話中のジョークや、場面転換のタイミング等、読者を退屈させない工夫が細かいところにもされていて、最初から最後まで楽しめる内容に満足です。