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絵が凄いから情感も迫力も段違い : この愛は、異端。 レビュー

 

タイトル:この愛は、異端。

  作者:森山絵凪

  年代:2017年~

  巻数:既刊3巻(3巻時点で第1部完結)(他スピンオフ+1冊)

 

あらすじ・概要

 自分を愛してくれる両親を交通事故で失い、たらい回しにされた親戚の家では度々性的虐待の危機にさらされ、人の世の地獄を味わった少女・淑乃(よしの)。

 古本屋で「悪魔の呼び出し方」の本を見つけ、藁にもすがる思いで実行した淑乃は、本物の悪魔・バアルを呼び出してしまいます。

 淑乃と一生行動を共にし、「口付け」を対価として願いを叶えるという契約を持ち掛けるバアル。

 地獄から救い出された淑乃は、実の親の様に自分を守ってくれるバアルに家族の愛を感じますが、18歳の誕生日の「それまでとは違う口付け」を境に、淑乃とバアルの関係は変わってしまいます。

 

緻密かつ鮮やかな絵で描かれる悪魔と人間の物語

 「悪魔と人間の禁断の恋」というテーマは、近似のテーマも含めありふれていますが、この漫画はとても絵が美しく、感情描写や内面の表現も丁寧でクォリティーが高いです。

 2人の拗れてもどかしい関係も含めて、まさにこの手の作品の正統派という印象。

 緻密な線で描かれた人物の顔の造形や、細かく書き込まれた背景が美しく、微妙な表情の描き分けもさることながら、光の当て方や、コマ割りでの間の取り方などとの合わせ技も多彩です。

 絵の表現力が豊かなので、モノローグとの組み合わせも情感十分です。

 バアルが願いを叶えることの対価である「口付けと愛撫」のシーンは、生々しくも扇情的で、悪魔としての邪悪さが前面に出ている時のバアルの表情は、人間離れした禍々しさがあり、この辺りの表現にも画力の高さが活かされています。

 邪悪な悪魔が見せる優しさや、純粋さと潔癖さの感じられる行いに隠された淫靡な真実といった、登場人物たちの性格の二律背反然としたアンバランスさも魅力的です。

 尚、3巻の時点で第1部完結となっております。本編以外にスピンオフの『この愛は、異端。―ベリアル文書―』が出版されておりますが、こちらは本編第1部読了後に読むことをお勧めさせていただきます。

 

 

 

こんな人にオススメです。

  • 人間と悪魔の恋物語を読みたい人。2人のすれ違いに、拗れる関係性といった要素を楽しみたい人。
  • 鮮やかかつ表現力豊かな絵で、小さなコマの背景まで書き込まれた濃い漫画を読みたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 直接的で性的な官能描写や、セクシャルな下ネタが多いので、そういうものが苦手な人。
  • 小さめのコマも多く、そこにセリフ・モノローグも多めなので、みっちりした漫画が苦手な人。※絵は小さなコマの1つ1つまで丁寧に書き込まれています。