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ゴブリンスレイヤー2巻 感想【ネタバレを含みます】

 

ゴブリンスレイヤー 2巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
 

新たに仲間も増えて新展開。ゴブリン退治のはずが、ゴブリン以外の強敵と遭遇します。ゴブリンスレイヤー2巻の感想です。

 

妖精弓手・鉱人道士・蜥蜴僧侶、ゴブリンスレイヤーを訪ねてきた3

ゴブリンスレイヤーを訪ねてきた3人の冒険者、妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶。3人とも銀等級の冒険者で、ハイエルフに、ドワーフリザードマンと種族的な取り合わせも変わっています。なかなか愉快な掛け合いをする一行です。

 3人が持ってきた依頼について、妖精弓手が世界に訪れている危機的状況を切々と語り始めますが、ゴブリンスレイヤーは「知らん」、「そうか」、「他を当たれ」、「ゴブリン以外に用はない」と取り付く島もなし。

予想外のゴブリンスレイヤーの反応に、段々と語りの勢いがなくなっていく妖精弓手と、面頬つきの兜のため表情が読めず、微動だにもせずに淡々とあしらうゴブリンスレイヤーの温度差に笑いました。

妖精弓手は世界の命運に関心を示さないゴブリンスレイヤーに怒りを露にしますが、「だが世界が滅びる前にゴブリンは村を滅ぼす」とゴブリンスレイヤーは切り返します。「世界の危機はゴブリンを見逃す理由にはならん」と。

 ゴブリン相手に国は動かず、熟練冒険者は報酬の安いゴブリン退治の依頼を受けない現状については、今までの物語でも描かれてきました。

そうして取りこぼされたゴブリンに故郷の村を滅ぼされ、家族を殺されたのであろうゴブリンスレイヤーにとって、これは譲れない部分なのだと思います。

ゴブリンスレイヤーには狂った復讐者としての面もありますが、完全に人間性を捨てたバーサーカーではなく、自分の体験に基づいた信念のようなものも感じられ、そこが魅力的です。

ゴブリンスレイヤーの反応に納得がいかずに、ヒートアップした妖精弓手のせいで話が脱線しかけましたが、依頼自体は大規模なゴブリン退治の応援要請でした。

依頼がゴブリン退治だとわかったそのコマの内に依頼を受諾し、自分からどんどん話を進めるゴブリンスレイヤーに再び笑いました。

 

呪文の詠唱

鉱人道士の呪文詠唱ですが、今まで出てきた他の「呪文遣い」とはまた違った感じでした。女魔術師や、魔女は〈インフラマラエ(点火)〉のような「真に力ある言葉」で魔法を使っていましたが、鉱人道士の詠唱は普通の言葉で歌うように詠唱をした後に、キーワードとなる呪文を唱えるというもの。触媒も必要なようです。

文化の違いか、魔法の体系自体が違うのか、さすがに細々した説明はありませんでしたが、こういった世界観的な背景を想像させる設定は、ファンタジー世界を演出する上で重要な要素だと思います。

特にお気に入りなのが〈酩酊(ドランク)〉の詠唱。この呪文は敵を酩酊させて眠らせるための物ですが、その詠唱は気持ち良く酒を飲んで眠りこけたあげく、夢の中でも酒を飲みたいという願望の様にも聞こえて、楽しげな感じが好きです。

 

人食い鬼(オーガ)

遺跡の奥に潜んでいた大量のゴブリンを退治した一行の前に、姿を現したのは「人食い鬼(オーガ)」でした。

様々な物語に登場する定番、ファンタジーではお約束とも言えるモンスター・アイテムの名称は多々ありますが、それらの扱いとグレードは作品ごとに大きく違います。

この作品世界における人食い鬼は、腕力、魔法ともに圧倒的で、刃もろくに通らない巨大で頑丈な体に、再生能力まで持ち、極めて強力なモンスターとして扱われています。

そんな存在の登場に慌てる一行。「なんだ、ゴブリンではないのか」とただ1人平常運転のゴブリンスレイヤーに、その反応に激昂する人食い鬼。

石畳の床を軽々と爆散させる人食い鬼の攻撃を至近距離で見ても、全く恐怖を感じた様子のないゴブリンスレイヤーは、人食い鬼の言葉に律儀に返答までしていて、シリアスなシーンなのにジワジワ笑いがこみ上げて来ました。

一行は人食い鬼の圧倒的な戦闘能力に追い詰められていきます。

死力を尽くしても魔法攻撃を一度切り抜けるのが精一杯。完璧なタイミングで奇襲を仕掛けても敵にはかすり傷しかつかず、こちらは反撃の一撃で瀕死。

仲間が戦い続けている間に何とか立ち上がるゴブリンスレイヤーと、こちらを見下して愉悦に浸りながらも、自分の魔法を一度防がれたことを思い出して怒り出す人食い鬼。

戦闘の流れに臨場感があり、細かい情報がしっかりと書き込まれつつも、勢いも伝わってくる絵と、迫力十分の戦闘シーンでした。

だからこそ、そんな戦闘の流れを文字通り「ぶった切る」ゴブリンスレイヤーの切り札のインパクトが凄かったです。

 

戦闘の流れを「ぶった切る」ゴブリンスレイヤーの切り札

 ゴブリンスレイヤーが魔法の封じられた巻物(スクロール)を開いたと思えば、胴体が真っ二つになった人食い鬼が倒れています。

いきなり真っ二つにされて混乱する人食い鬼と、展開についていけない読者に、ゴブリンスレイヤーは「〈転移(ゲート)〉の巻物だ。海の底へと繋げた」と説明を始めます。

空間と空間をつなぐ〈転移(ゲート)〉の巻物で、深海へつながる門を開いたという説明ですが、この場面、起こった現象と、その描写に物凄くリアリティーを感じました。

事態を俯瞰していた妖精弓手の視点で回想が入りますが、まずゴブリンスレイヤーの手元のスクロールの位置で、小さな「穴」が開き、そこから深海の水圧で噴き出した細い水流が、ゴブリンスレイヤーに迫っていた大きな火球ごと、人食い鬼の体を切り裂きます。

さらに「穴」は広がり、噴き出し口が大きくなった水流は鉄砲水のごとき勢いで人食い鬼を吹き飛ばしました。

移動用の「魔法の門」が出来上がる過程がそのまま攻撃になっています。

魔法の巻物というファンタジー感あふれるアイテムですが、その使い方が想像のはるか斜め上である上に、いきなり人食い鬼が真っ二つになっている演出にもインパクトがあります。魔法の発動で起きた現象に感じるリアリティーも合わせて、この作品の「凄み」を感じました。

本来移動に使う〈転移(ゲート)〉の巻物を攻撃に転用するだけなら、他にもいろいろなやり方があったのでしょう。しかし、この場面はただ〈転移(ゲート)〉の巻物で敵を倒すということ以上のインパクトがありました。

しかも、この巻物、本来はゴブリンの巣を水攻めにして潰すための備えだとか。

物凄い貴重品で、高価な〈転移(ゲート)〉の巻物に、追加でお金をかけて改造し、対ゴブリン用に持ち歩くというでたらめさと、そんなことをするだろうということに、納得できてしまうゴブリンスレイヤーというキャラクターが凄いです。

ゴブリンスレイヤーというキャラクターで、読者を驚かせてやろう、呆れさせてやろうという原作者・蝸牛くも先生の熱い思いを見た気がしました。

 

 

匂いを誤魔化すためにとゴブリンスレイヤーに、ゴブリンの血や臓物を塗りたくられた妖精弓手に、彼女が助けを求めた時に、死んだ目で「慣れますよ」と呟いた女神官。

圧倒的な強者のオーラを放ち、実際に一行を終始圧倒しながらも、「相手がゴブリンスレイヤーだった」ために、結局、名前さえ覚えてもらえずに倒されてしまった魔神将配下の人食い鬼。

コミカルな場面でも、シリアスな場面でも、敵も味方もゴブリンスレイヤーの被害を受けています。ゴブリンスレイヤーには一切悪意はなく、淡々としているのも笑いを誘います。
 
ダークファンタジーとしてのハードでシリアスな世界観の描写と、本人は大真面目で、淡々としているにも拘らず、読者を笑わせるゴブリンスレイヤーのキャラクターの組み合わせは、面白さ抜群です。