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陰影のある切なさ : 兎が二匹 レビュー

 

タイトル:兎が二匹

 著者名:山うた

  年代:2016年

  巻数:全2巻

 

あらすじ・概要

 約400年の人生を歩んできた不老不死の女性すず。外見年齢20代、仕事は骨董の修復、日課は自殺。

 そんなすずに思いを寄せる青年、咲朗。年齢19歳、職業は喫茶店店員、日課は自殺ほう助。

 そんな二人の日常の一幕から、物語は始まります。

 これまで歩んできたつらい人生を忘れることができず、自身の死を望み続けるすず。

 そんなすずと共に生きることを望みながらも、死ぬのを手伝わないなら別れると言われ、毎日号泣しながらすずを殺す咲朗。

 咲朗は持ち前のポジティブ思考で、毎日めげずにすずに自分と生きるように説得を続けますが、死ぬことをあきらめないすずは、ある日とんでもない方法を思いついてしまいます。

 

影と重みのある純愛

 長い時間を生きるすずと、そんなすずに寄り添う咲朗。互いに孤独を抱え、相手のことを想い合いながらも、すれ違ってしまう二人の喪失と追憶と純愛の物語です。

 不老不死を題材にした作品としての、死ねない辛さや、時間の牢獄といったオーソドックスな部分を押さえた上で、それだけで終わらずに、1つの物語としてより踏み込んだ仕上がりになっています。

 構成としては、物語の最初の部分である程度行きつくところまで話が進み、そこまでの経緯や背景が語られた後にクライマックスへとつながり、最後の結末へと収束します。

 全体を通して印象的なのが、黒と白のコントラストが放つ独特の雰囲気と凄みです。光と影、幸福と不幸、生と死、コーヒーとミルクのようなコントラストの表現にこだわりを感じる作品です。

 

こんな人にオススメです。

  • 不死者や不老不死を題材にした物語が好きな人。
  • 切ない物語が読みたい人。余韻のある物語が好きな人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 本題の話とは関係ない部分の粗や、細かい齟齬でも一度気になると白けてしまう人。
  • 重い話が苦手な人。