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セントールの悩み2巻 感想【ネタバレを含みます】


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 人馬や翼人といった形態の人類がなぜ存在するに至ったか、世界観の説明の根本の部分が語られる、セントールの悩み2巻の感想です。

 

これがカルチャーショックというものか

 第5話では、姫乃のいとこの紫乃が登場します。

 姫乃のことが大好きな紫乃ちゃんのなつく様子は微笑ましいです。しかし、姫乃が読んであげている絵本の違和感がすごい。

 物語の内容は、英雄が悪い魔法使いをやっつけて、助け出したお姫様と幸せになりましためでたしめでたしといったオーソドックスなもの。小さい子供向けの絵本の内容としてもおかしくはありません。

 しかし、絵本の文章の中に「非民主的」、「法に背く悪いこと」、「民主的に英雄を選び」等々、絵本とは思えないワードが次から次に出てきます。

 極めつけは最後のめでたしめでたしに該当する部分。「英雄は故郷に帰ると憲法を制定し元お姫様と獣たちと末永く自由・平等・博愛のもと民主的に暮らしました。おしまい」となっています。

 思想教育というべきか、思想統制というべきか、なんにせよ作為的なものを感じます。

 ところが、紫乃ちゃんは物語に夢中。読み聞かせをしている姫乃も笑顔で、特に違和感はない模様。

 2人が違和感を覚えないことに、物凄い違和感があります。この違和感がカルチャーショックというものでしょうか。

 その次の回「セントールの秘密」では、作中世界の進化について語られています。

 「この世界」の人間の様々な形態の分類と解説、その進化の起源についても非常に理に適った説明がされています。

 図解付きで分かりやすい説明、物語としても「世界についての授業」という形を取っているので世界観に浸りながら読み進められました。

 形態が違うことが多くの差別を招いたという歴史の話、そこから現実の四肢人類の世界を「あり得たかもしれない架空の世界」とし、現実の世界の差別問題への皮肉までをも自然な話の流れの中に入れてくるのには驚きました。

 「故に平等は時に人権や生命よりも重いのです」という先生の結びの言葉と、その後に出てきた憲兵らしき人たちが、絵本のときに感じた違和感の正体をはっきりとさせてくれました。「この世界」の日本ではこれが日常風景ということですね。

 

人魚形態と水人・山人という分類

 7話では、人魚形態について語られていますが、その前段階でも翼人の羽や、体の大きさと耐寒といった話題にも触れられています。1つの話の中で話題が二転三転するにも拘らず、綺麗にまとまっていて、理解しやすいのは助かります。

 人魚の学校との合同授業ということで姫乃たちも水着での参加。

 バスが止まった駐車場に戦車も止めてあったり、移動中の生徒に声をかけている警備の人が銃火器武装していたりと物々しい雰囲気。

 人魚とそれ以外の形態という括りではなく、水人と山人という分け方がされていて、学校の名前も「国立第14水人高等学校」となっています。

 人魚形態の生徒の発言から、他形態の人間を見慣れていないこともうかがえますが、7話の最後には地上の学校に通っていると思われる人魚の学生も登場します。

 水人と山人という分類は水中主体の生活をしているか、陸上主体の生活をしているかという分け方なのでしょうか。

 教室の中に小さな魚や海老が泳いでいる描写があって、少し驚きました。虫が窓から入ってくるような感覚なのでしょうか。

 7話のオチは、お姫様だっこにあこがれる姫乃で飾られましたが、体重の問題は抜きにしても、人馬形態をどのように抱き上げたら、お姫様だっこをしたことになるのかが、少し気になります。

 

純和風ケンタウロスと巫女服の天使

 日本人馬は元々武士ということで、流鏑馬の練習シーンから始まる第8話。4足走行だからなのか、走りながらでも矢を射ることが出来るようです。

 姫乃たちのクラスの委員長・御霊さんの家は神社ということで、巫女服姿の御霊さんが登場。そして、御霊さんの形態は翼と輪っか(輪毛)を持つ翼人というわけで、巫女服の天使というミスマッチが発生します。

 あらためて見るとミスマッチなはずなのですが、あまり違和感を覚えないのは、「この世界」の風景に慣れてきたからなのか、御霊さんが巫女服を着こなしているからなのか判断に迷うところです。

 ある日、刃物を持った男が御霊さんちの末っ子を人質にして、神社に立てこもるという事件が発生。

 緊急事態なのですが、妹に渡された十字槍を極々自然に受け取り、極々自然に構える御霊さんには笑ってしまいました。

 そして、切羽詰まった御霊さんが、姫乃に無茶を言うわけですが、無茶を言う御霊さんの横から口をはさんだり、姫乃に適切なアドバイスをしたりと、場数を踏んでいそうな姫乃の親友・希。その後の成り行きを見るに彼女のアドバイスは適切かつ重要でした。

 最後は姫乃の突貫で事なきを得たわけですが、やはり人馬の身体能力が凄まじい。神社の境内から飛び上がり、本堂と思われる場所の手すりまで飛び越えて、犯人に蹴りを食らわしています。

 ご神体と思しきものが落っこちていたので、それが大丈夫だったのかも少し気になります。

 

 

 世界観の根本の部分、六肢人類がどのようにして生まれたのかということ、各形態の特徴について語られたことで、世界観もはっきりとしてきました。

 生活の描写も、会話の話題も、現実の社会と共通する部分もあれば、「この世界」特有の部分もあり、たんにコミカルなやり取りが楽しいこともあれば、話の内容に唸らされることもあり、それらがひとつながりになっていることがまた面白いです。

 形態が違う姉妹を指す「違身形(たがみがた)の姉妹」という表現のような造語は「この世界」によりリアリティーを感じることが出来て特に好きです。

 おまけページでも、動物や人類の絶滅した形態について語られていて、世界観をじっくり楽しむことが出来ました。