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セントールの悩み6巻 感想【ネタバレを含みます】


セントールの悩み(6)【特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

 

 少しずつ開示されていく新情報から、いろいろなことを想像するのもこの漫画の楽しみ方だとは思うのですが、それにしても今回は気になることが多すぎました。セントールの悩み6巻の感想です。

 

遺伝のメカニズム、形態決定遺伝子と違身形、混合形態

 6巻のおまけページは「家庭の遺伝学」。

 どこかで聞いた風で、私たちの感覚に当てはめるとしっくり来そうで来ないネーミングが世界観を醸しています。

 今まで謎だった、形態に関する遺伝の仕組みと実例、例外がわかりやすい説明文で描かれ、御霊姉妹のような違身形(たがみがた)や混合形態に関する説明もありました。

 おまけページがマニアックかつ豪華なのは今まで同様ですが、「この世界」ならではの形態に関する説明と、私たちの世界の遺伝にも当てはまるだろう部分が、まとめて綺麗に解説されていく様は驚愕の一言。

 分かりやすくもいかにも説明調の文章と、解説イラストが、一般家庭向けテキストの雰囲気を出しています。

 混合形態に関する風評被害、隔世形態遺伝に関する問題対策にまで言及されていたのがまた興味深いです。

 ただ気になるのは、混合形態に関する差別的発言についての通報先が「最寄りの警察」、「内務省正常社会保全局」、「国防省憲兵隊思想治安課」と3つもある点。

 形態差別関連の罰則が重いのはいまさらなのですが、文章の内容から正規のテキストと思われる「家庭の遺伝学」に、通報先が3つも並んでいるのが、大人の事情を感じさせます。それぞれの設立の経緯と力関係がすごく気になります。

 

両生類人、ジャン・ルソー

 33話では、フランス人にして両生類人のジャン・ルソーが登場。

 様々な形態の違いで差別の歴史はあったものの、生物として1つの種である人馬、翼人、竜人、角人、長耳人、牧神人、人魚などの哺乳類人、女王のみが卵を産み、通常種と戦闘種がいる南極人に加えて、両生類人は3番目の人類種となります。

 ルソーさんは子供の頃にジャングルで行き倒れていたところ、フランス人宣教師に拾われ、哺乳類人の社会で教育を受けました。

 現在はコングロマリットの会長職に加え、少数民族保護活動なども行い、国連事務総長との何がしかの予定があるなど、多忙極まる仕事ぶりです。

 そんな彼が専用ジェットで向かうのは自分と同じ両生類人の暮らす土地。ジェット機の中で背広を脱ぎ、民族衣装に着替え、ヘリに乗り継いで現地入り。

 情報が断片的なため、詳しいことはわかりませんが、両生類人の社会の中でもルソーさんの地位は高いようです。そしてどうやら彼の部族は現地の哺乳類人たちと争っている様子。

 さらに両生類人は南極人を神と崇め、南極人も何がしかの介入をしている模様。以前、アステカでは南極人が神として祀られているという話がありましたが、あれは哺乳類人の話だったので、それとはまた別口になります。

 ルソーさんは抗戦派の考え方を「哺乳人類の考え、我等にとっての毒」と表現しました。

 彼は両生類人としてのアイデンティティーを持ちつつ、哺乳類人的な考え方も理解しているわけですが、その両方を俯瞰する視点で物事を見ているようです。

 いろいろ気になる新情報が出てきた回でしたが、断片的な情報が多かったのでなおのこと気になります。

 姫乃たちの学校にもルソーさんが講演に来ましたが、準備委員のスーちゃんと当日どんなやり取りがあったのか、それとも直接会わなかったのか、気になります。

 御霊さんがお茶を勧めるシーンが、もしスーちゃんとの対面シーンになったら、ルソーさんがリラックスできるシーンがなくなってしまう気もしますが。

 それにしても、巻末のおまけページで明かされた衝撃の事実。ルソーさん秘書さんとそういう関係だったのですね。

 翼人や人馬といった組み合わせだと、形態の違いはあっても生物としては同種ということになりますが、ルソーさんと秘書さんは完全に異種恋愛。この2人がどのように出会い、現在の関係を築いていったのかすごく気になります。

 

神様なら御霊神社で末ちゃんとオセロをしています

 35話は水人の祭事から、神様についてのあれこれが語られますが、場面ごとで見ても、全体の流れで見てもとても面白い回でした。

 水人は普段は女性もトップレスで、山人が来たときのみ水着をつけるとのこと。実際水人男子2人は水着の写真集を見てはしゃいでいたのに、目の前の水人女子の胸には無反応です。

 そこに祭事の巫女役で、アイドルのエリちゃんが通りかかります。すると男子の視線はその胸元へ。エリちゃんは胸元を隠します。彼女はまだ水人の居住区に来てから日が浅く、水人式の生活になれていないようで、男子もその恥ずかしがる様子がいいとのこと。恥じらいがあるからこそ、色気が生じるという考えはなかなか興味深いです。

 このエリちゃんが山育ち、つまり水人の居住区域外で生活していたのは間違いないのですが、どのような経緯で今この場にいるのかも気になります。

 その1、あくまでアイドル活動の一環で、巫女役をやるために短期間滞在している。

 その2、両親もしくは片親が人魚以外の形態で、それまで陸上生活をしていたが、不便なので何がしかの機会に移ってきた。

 その3、将来どちらで暮らすか考えるために、それまで住んでいた山人の町から移ってきて、現在水人の町をお試し中。

 すぐに思いつくのはこのあたりでしょうか。エリちゃんは今まで山人として暮らしていたということに加えて、角人と人魚の特徴が出ている混合形態なので、少なくとも片親が人魚以外の形態である可能性は高いです。両親とも人魚以外の形態で、隔世形態遺伝の可能性もあります。

 お祭りの夜、エリちゃんは沖の小島にて「多言神」の御神体に歌を捧げるわけですが、御神体である石塊の背後から、御神体そっくりの巨大な怪物が出現。

 怪物は多言神を名乗り、自分に従えと言ってきます。

 同行したおじいさんはニセモノだと言い切り、エリちゃんの手を取って逃げ出します。

 おじいさんが言うには、神様はあくまでも石塊の方。「本当に居たりするのは神様じゃあない」とのことでした。

 怪物の正体としておじいさんがあげた候補と、海上保安庁に連絡をするという選択肢が現実的過ぎて笑えました。

 突然非現実的な事態が起きて、神を名乗る正体不明の怪物が現れた状況に、飲まれてしまったエリちゃん。

 それとは対照的に、相手を神様ではないと言い切ったおじいさん。祭事の様子から神様に対する敬意は感じ取れますし、「本当に居たりするのは神様じゃあない」とした上で、はっきりとした存在ではない神様への信仰心は感じ取ることが出来ます。

 ロボットか、人工の生物かは不明ですが、怪物の正体は南極人の使役するものでした。

 報告を受けた南極人はその結果に首を傾げることになるわけですが、これはおじいさんの精神性の勝利と言っていいのではないでしょうか。

 後日、スーちゃんが姫乃たちに「神様」について尋ねます。そこに通りかかる神社の娘の御霊さん。

 話を振られた御霊さんの中で、内なる主婦と現代人としての学識が戦いを繰り広げますが、結果は内なる主婦の圧勝。

 御霊さんは家計のため、ものすごくいい営業スマイルで、御霊神社の祭神を「特に学業に験あり」と宣伝します。

 ところが、宣伝された神様は、今まさに御霊神社にて、末ちゃん相手にオセロで連敗しているのでした。

 御霊さんが存在を信じていないにも関わらず、それはいい笑顔で紹介した神様が。

 偽物の神様まで作って暗躍している南極人も、その存在を把握していない超常の存在が。末ちゃん相手にオセロで連敗して「また負けじゃあ」と叫んでいる。

 面白くて、かわいくて、オチが最高です。

 

魔法少女プリティーホーン

 以前、姫乃が志乃ちゃんに読み聞かせていた絵本と同様、子供向けのメディアに政治や思想の話が絡んでくるのは「この世界」の日本では当たり前の様ですが、プリティーホーンのオープニングテーマには変な笑い声が出ました。

 サブタイトルに、変身シーンの決め台詞、「民主主義空間が歪んでいく」という言葉もツボにはまりました。

 

 

 南極人が神として紛争に介入していたり、偽物の神様をわざわざ用意して水人の祭事に介入したりとかなり怪しい動きをしています。

 御霊神社の神様のような存在は、南極人側からは完全にノーマークのようなので、今後、どのようにかかわってくるか楽しみです。