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ただ怖いのではなく、深い味わいのあるホラー : りんたとさじ レビュー

 

タイトル:りんたとさじ

  作者:オガツカヅオ

  年代:2009年

  巻数:全1巻

 

 

あらすじ・概要

 快活なずぼら女子大生さじ(本名佐藤順子)の恋人は、験かつぎオタクのメガネ青年リン太。大学生としての日常を過ごす2人ですが、彼らの日常には、度々、不条理な非日常の世界が這い寄って来ます。

 日常と非日常、正気と狂気が紙一重。独特なセンスと、緻密なタッチで演出される異色の現代青春ホラー漫画。

 

ありふれた日常のはずが、気が付いたら不気味な非日常

 ホラー漫画にもいろいろなものがありますが、この漫画は幽霊や、怪奇現象を題材にしています。

 いわゆる「オカルト」タイプのホラー漫画ですが、宗教や、民俗学的な深みのある世界観を構築したりするわけではありませんし、絵の迫力や、立て続けに起こる異常事態で、畳みかけるように怖がらせるようなものでもありません。

 ありふれた日常から、ふとした拍子に奇妙な世界に迷い込んでしまうような、日常のすぐ近くにある非日常の世界の不気味さと不条理さを持ち味とするホラー漫画です。

 怖さよりも、不気味さがジワジワと来ます。

 話の運び方や、漫画としての演出に、オガツカヅオ先生のセンスが光っています。

 背景の景色や、物の質感が精巧に書き込まれていて、漫画としてのコマ割りや構図も、その場所の空気が伝わってくるようです。

 そんなリアルな日常の描写で話が進み始めると、背景だったり、擬音だったり、会話の内容だったりに、少しだけ違和感が。

 そして、気付いた時にはもう異常な迫力のある非日常の世界に巻き込まれています。

 日常の描写が精巧だからこそ、非日常の不気味さが際立ちます。

 怪異が出てきて終わりの話もあれば、真相が二転三転する話もあり、危機を脱した後に不気味な余韻や、とんでもないオチが待っている話もありと、その話ごとに、どんな終わり方をするのかも違うので、そういう意味でも先が読めません。

 絵としてのものにしても、言葉としてのものにしても、細かい情報の組み合わせが積み重なって世界観を作っている作品なので、読み飛ばしをする人にはオススメできません。

 

こんな人にオススメです。

  • ありふれた日常と、不気味な非日常が、陸続きになっているようなホラー漫画が読みたい人。
  • 単純に恐いホラーよりも、不気味で奇妙な味わいのあるホラーが読みたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 読み飛ばしをする人。
  • 怪異の不気味な存在感や、臨場感のある非日常の世界よりも、その正体や、逸話、伝承などの背景が気になって仕方ない人。