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神ならざる人の葛藤と選択の物語:五佰年BOX レビュー


[まとめ買い] 五佰年BOX

 

タイトル:五佰年BOX

  作者:宮尾行巳

  年代:2017年~2018年

  巻数:全4巻+1話(電子書籍版のみの販売)

 

作品概要

 好意を抱いていた幼なじみ・真奈の婚約の報告に、落ち込む青年・遠野叶多。

 真奈の家の蔵掃除を手伝っていた彼は、蔵の中で不思議な箱を見つけます。

 その箱の中は箱庭になっていて、作り物とは思えない中世の日本らしき世界が広がり、小さな人々が暮らしていました。

 不思議な箱を蔵掃除の報酬としてもらった叶多は、その観察に夢中になります。

 ある時、箱の中で野盗に襲われている少女を見つけ、助けようとした叶多は、勢い余って野盗の1人を殺してしまいました。

 慌てて真奈に相談に行きますが、顔見知りである真奈の父親の口から出たのは「真奈?だれそれ」という言葉でした。

 

過去を変える不思議な箱に翻弄される人々

 神のような目線で過去の世界を覗き見て、神のようにそこに映るものに自在に干渉できてしまう不思議な箱を手に取ってしまったが故に、その箱に運命を翻弄される人々のお話。

 箱の持つ力についての分析、箱による過去改変がもたらす影響などは極めて細かく描かれています。

 過去改変・歴史改変、バタフライエフェクトパラレルワールドというSF的な要素が多めです。

 過去の改変の影響などのSF的な現象に対する考察・説明も大きな穴がなく、しっかりとしていますが、ロジカルな部分よりも、時間の壁や、人知が及ばないほど複雑に絡み合った因果に翻弄される人間の葛藤を描く部分の方にこそ力が入っています。

 何が正しいのかわからない中で、重たい選択を迫られる人間の苦悩と模索、葛藤と選択を描いた物語です。

 絵が綺麗で、登場人物の心理描写もしっかりとしていました。

 事件や問題の発生から、次の展開へと進む流れもスムーズで無駄がないです。

 一方で、無駄がなさ過ぎて味気なく思う方もいるかもしれません。後半は特に駆け足なので、もう少しじっくり描写してほしいと感じる場面がいくつかありました。

 この漫画は全4巻でとりあえずの完結ですが、電子書籍版のみ「追加の1話」が単体発売しています。

 

こんな人にオススメです。

  • スムーズにサクサク進む「時間を巡る物語」を読みたい人。
  • 人知を超えた力に翻弄され、悩みながら、葛藤しながらも前に進む人間の物語を読みたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 紙の漫画派の人。電子書籍を使わない人。※追加の1話が電子書籍版のみの販売なので、紙の本で集めると、細かいところが補填されずにモヤモヤすることになります。
  • 物語の展開にラブストーリーを期待している人。