コミックコーナーのモニュメント

「感想【ネタバレを含みます】」タグのついている記事はネタバレありの感想です。 「漫画紹介」タグのついている記事は、ネタバレなし、もしくはネタバレを最小限にした漫画を紹介する形のレビューとなっています。

セントールの悩み19巻 感想【ネタバレを含みます】


セントールの悩み(19)【電子限定特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

 今回もいろいろと面白い話が盛りだくさん。修学旅行編もスタートします。そして、巻末の「あとがき…」ではまさかの展開がありました。セントールの悩み19巻の感想です。

 

姫乃とスーちゃんの不思議体験

 152話では、民俗学部の活動中に姫乃とスーちゃんが不思議体験をすることに。

 存在するはずのない鉱山鉄道に乗った一行。一緒にいたはずの希と恭子もいつの間にか不気味な何かと入れ替わっていて、普通だったら緊迫感が出るはずが、割と余裕のある姫乃とスーちゃん。

 スーちゃんの安否と、異常な現状を確認した姫乃が最初に言ったことが、「で、で、どうしよう。やっつける?やっつける?」だった所で噴き出しました。

 姫乃は普段から、意識的にも無意識的にもぶりっ子をしていますけれど、素の部分や、とっさの判断が割と物騒ですよね。

 怪異に遭遇して、まず初めに出る選択肢が「やっつける」or「やっつける」です。言い方の可愛さととっさの判断の物騒さのギャップが凄いです。

 スーちゃんもかわいかったです。

 スーちゃんが怪異と入れ替わらなかった理由、合理的な考え方をする南極人であるにも関わらず、明らかに非合理な状況に巻き込まれてもクールな様、スーちゃんの姫乃へのアドバイス、締めの含蓄のある言葉と、いろいろ見所がありました。

 しかし、私の心に波紋を投げかけたのは、21ページ目の駅の時刻表を見てから姫乃の方を振り返ったスーちゃんの1コマです。

 自分でもなぜなのかわからず、うまく説明ができないのですが、フレキシブルに首を曲げながら姫乃の方を向くスーちゃんを凄くかわいらしく感じました。

 首の曲がり具合と、口の開き具合、つぶらな瞳のバランスでしょうか。自分でもうまく思考を処理できなかったのですが、とにかく異様に「かわいい」を感じました。

 

高校生巫女、御霊真奈美の日常~除霊編~

 155話、扉絵から水垢離をする御霊さん。いかにも巫女らしく、同時に御霊さんにしては意外な場面だなと思いました。

 巫女業に対する彼女の姿勢は、建前や見栄えは大切にしつつも、ビジネスライクといいいますか、実利的な仕事と割り切っている印象があったからです。巫女の仕事としてお祓いに行くことはあっても、本人があまり心霊現象等を信じていないタイプですし。

 そんなことを思いつつページをめくると、扉絵はちーちゃんがテレビで見た知識をもとにしたイメージ図というオチで、御霊さんは水垢離を「バカなこと」呼ばわりです。ちーちゃんの「テレビのひとバカなの?」という問いに「そうよ」と断定的に答える御霊さんに笑いました。

 しかもその間、本人は巫女服を着て竹ぼうきで神社の境内を掃除中。言動のミスマッチというほどではないですが、何かがちぐはぐしているのが楽しいです。

 そんな御霊さんが今回お祓いに行った先では、悪霊が御霊さんを狙って罠を張っていました。はい。出オチですね。

 14巻の104話で出てきた、おどろおどろしい背景のある年代物の大悪霊(先史時代産・神殺しの由来持ち)ですら近づくこともできなかった御霊さんに、ぽっと出の悪霊が何かできるとも思えません。

 案の定、御霊さんに手も足も出ない訳ですが、大物ぶって登場した悪霊が、御霊さんに気付かれることすらなくやられていく様子は見ていて面白かったです。

 オチがわかっているからこそ、そこまでの過程がどのようなものであるかが見どころなのですが、ベタな出だしから、やや変化球気味の展開を経て、とんでもないダメ押しに、その後の落差のある最後と楽しく読めました。

 特にダメ押しの部分の御祭神の追い打ちは突っ込み所が多くて面白かったです。

 御霊さんの胸元から這い出した蛇に「くっ!追手の式神か!」という悪霊。読者である私はそれに憐憫の目を向けます。残念ですが、その蛇は式神どころか、年代物の大悪霊も一飲みにしてしまう御霊神社の御祭神です。御霊さん1人の時点で手も足も出ないのに、なんという過剰戦力でしょうか。

 その御祭神の語る呪いについての説明に、「~(正常とは言えない精神の持ち主を現す俗称)が己を恨んでいるというその事実が恐ろしいのじゃ、ただ手順を踏むだけの術など何の力もない」と公序良俗を配慮した表現が入っているのにも笑いました。

 この手の配慮をして文字の一部が伏字になっていることはよくありますが、あえてそれをネタにして笑いを誘うだけではなく、わざわざこんな長い言い回しを用いるのはこの漫画ならではです。

 扉絵の部分も込みで16ページしかない話でしたが、面白さがみっちり詰まっていて大満足でした。

 

修学旅行編スタート、水上都市平安京

 156話では修学旅行編がスタートします。

 行先は京都ならぬ京湖・水上都市平安京です。

 いきなり大きな羅生門の登場でインパクトのある街並みでした。

 18巻のおまけページによると、日本に現存する人魚形態者の集住地域として、京湖の皇城湖と、西日本の太平洋岸沿いが上がっていました。日本の歴史における人魚の存在についてはこれまでも少しずつ語られてきましたが、今回見た限りでは街中に人魚は見かけませんでした。

 皇城湖という地名からして、一般人が入れない場所の可能性もある気がします。それ以前に人魚形態居住区域は環境汚染を防ぐためという理由で、無許可の立ち入りは禁止(※違反者は無警告で射殺される場合もあり)だったはずなので、観光地にはなっていなさそうですが。

 この辺りの情報も、次の巻で恭子の蘊蓄が披露されるかもしれません。幕末の頃にどうなっていたのかも気になりますね。

 修学旅行中のエピソードとして面白かったのは、女子なのに女湯に入るのに目隠しが必要な朱池さんと、そんな彼女に笑顔で目隠し・介助する犬養さんでしょうか。存在感のある登場は久しぶりな気がします。この2人のエピソードももっと見たいです。

 

まさかの御霊母

 修学旅行のため、御霊さんのいない御霊神社。ちーちゃんと末ちゃんの眠る部屋に深夜に訪れる人影は、まさかの御霊母でした。これまで回想シーンでは何回か登場していましたが、リアルタイムでは初めての登場です。

 「あの子の力が無闇に強すぎてなかなか様子を見にこれないけど」とのことらしいです。

 御霊家はまだ明かされていない謎が多いですし、何がしかの事情で世間的に死んだことになっている可能性や、霊能力者云々の事情で御霊さんの力が強すぎるために一緒に暮らせない可能性も考えましたが、これまでの情報と、深夜の不自然な来訪を考えると、存命の可能性はないように思えます。

 ちなみにこの場面は、巻末のおまけ漫画である「あとがき…」です。不在の理由も、生きているのか死んでいるのかもこれまでぼかされたまま19巻まで来て、まさか後書きで生死が判明するとは思いませんでした。

 

 

 不思議体験・心霊現象・怪異絡みのエピソードでは、ちょくちょく宇宙キノコが絡んでいる様なのも気になります。全部が全部という訳ではないようですが、今回の悪霊も、17巻の133話で末ちゃんを狙ってきたピエロも正体は同じでした。

 まあ、いくら出てきても御霊さんをどうにかできるとは思えませんが。

 この手のエピソードにおいて、御霊神社は最強ですね。もう出てきた瞬間に相手側に勝ち目がなくなります。

 彼方市の議席は御霊神社の氏子で廻しているというびっくりな新情報もあり、御霊神社の謎はますます深まりました。

 神社の話とは全く関係ありませんが、現在の御霊さんの身長が180㎝であるということもわかりました。ちーちゃんの学級参観の辺りから何となく彼女の背が伸びていると感じていましたが、クラスメイトと並んだ時の身長差を比べると、物語開始時と現在ではその差は歴然です。すごく伸びています。